黒胡椒もお砂糖も


 高田さんは微笑を口元に浮かべたまま、いつものようにじいっと私を見ている。

 ぎゃあああああ~・・・

「――――――待てますよ」

「はいっ!?」

 待てるだ!?何、何のこと!?私は顔をほてらせたままで彼を凝視する。もう目が離せなかったのだ。魔法みたいに、私の視線は彼に吸い寄せられてしまっていた。

「部屋でテレビ観賞でもいいんですよ。俺は待てますから」

 いくらでも、あなたの準備が出来るまで。彼はそんなことは言っていないのにそう聞こえた。

 私は無理やり視線を外す。体中がマグマの固まりみたいになっていた。ホットワインなんて飲まなくてもこんなに熱いよ~!神様~って、そんな心境だった。

 待てますよって・・・そんな。くっそう、本当に待ちそうだよね。涼しい顔して、ベッドに腰掛けて、のんびりテレビ見てそうだよね、この人!!

 私は震える呼吸を落ち着けるべく努力をする。

 はい、深呼吸~。吸って・・・吐いて・・・。

 そして勇気を振り絞って彼に向き直る。

「・・・明日、金曜日ですけど」

 平日でしょ?仕事なんだよ?といさめたつもりだった。私たち、立派な社会人でしょって。

 彼は少し考える顔をして、やっぱり静かに言う。

「俺はもう終わってるから休めますけれど。・・・尾崎さん、最初のアポ何時ですか?」

 うわああああああ~ん!私は泣きそうになった。


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