黒胡椒もお砂糖も


 彼の背後には、今日夫婦になることを誓った新婚の二人が寄り添っている。大勢の人がそれを祝福して拍手や歓声を送っていた。

 キラキラと光る笑顔。

 新郎がいきなり新婦を抱きしめてキスをして、わあっと会場が沸いた。彼女は顔を赤くして恥かしげに稲葉さんを睨んでいる。それを周りが囃し立てる。

 幸せそうに微笑む中央の稲葉がまた彼女を捕まえる。彼等のまわりにはたくさんの花びらが舞って、光をまとってキラリと輝く。

 その前で。

 私を見て、照れて微笑む高田さんが、手を出している。

 それを端から眺めて楠本さんや平林さんが並んで微笑しているのが見えていた。


 視界が潤んで揺れた。


 だけど何とか口角を上げる。


 そして彼の手を取って、二人で皆の輪の端に戻って行った。



 繋いだ手がいつものようにぬくもりをくれる。



 それはゆっくりと体中に浸透してまわり、私の全部を温めた―――――――――









「黒胡椒もお砂糖も」終わり。
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