黒胡椒もお砂糖も


 彼等から必死に逃げているから。

 脳裏に浮かぶのは、うちの会社名物の優績者とその相棒の美形。

 大会以来避け続けているけど、タイミング悪くエレベーターホールや食堂で一緒になることがあった。

 その時、平林さんは必ず何か企んだ笑顔で、高田さんは相変わらず無表情で、こちらに真っ直ぐに向かって来る。

 気付いた時にはすでに遅く、私は背の高い彼等に包囲されて縮こまるのだ。

 主に話すのは平林さんだけど、その間無口で無愛想なイケメンも席を立つこともなく一緒に座っている。

 たまに私をじっと見る。それが苦しい私だ。

 支部でも一度、尾崎さん最近平林さんと高田さんと仲がいいんですね~と事務員さんに言われて倒れるかと思った。

 いつ見てたの!?もしかして、噂になってる!?とショックを受けて。

 ぎょっとして振り返った私に、事務員の小原さんがお目目をキラキラとさせて覗き込んできたのだ。

「前も一緒に食堂にいましたよね?ナンパしたんですか~?」

 私が声かけたことになってるし~!!

「いいいいいえ、違います!全然仲良くないんです」

 必死でいい訳をする私を見てケラケラと笑い、彼女は、羨ましいですよ、平林さんと高田さんとお昼なんて、と言う。

 ・・・望んだことじゃないんです、と心の中で呟いて、からかわれてるだけです!と答えてダッシュで逃げた。

 目立ってる!目立ってるから、私!!


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