オフィスの野獣と巻き込まれOL
私は、久しぶりに義彦君と会う約束をしていた。
本当にひどい人だ。
実際に顔を見るまでは、思いつくだけの悪い言葉を吐いて、ののしってやろうと思っていた。
それなのに。
義彦君の顔を見るのも、久しぶりだなあと思ってしまうと、
会えてうれしいという気持ちの方が上回ってしまう。
酷い目にあわされた事も、多々あるけれど。
それ以上に、この人に恩を受けたことは事実だ。
彼は、待ち合わせのホテルのロビーで私の姿を見つけると、
昔、うちの実家で飼っていた犬のように喜び勇んで走って来た。
「美帆!!」
義彦君は、飼い犬がじゃれつくように私に飛びついた。
30代も後半になるというのに、義彦君は実際の年齢よりも若く見える。
義彦君は、身なりに気を使っている。
まあ、必要以上に自分を良く見せようとしているともいえる。
堀川課長とは、まるで正反対だ。
「止めてったら」
私はともかく、義彦君は、会社の重役についている。
社会的立場のある人間だ。
それに。
もう、恋人同士じゃないから、人前でハグするのはまずい。
義彦君、そういうのをまったく気にしない。
ずっと会えなかった恋人に会ったみたいに嬉しそうにしてる。