オフィスの野獣と巻き込まれOL

「義彦君、何度も言ってるけど。人前で、こういうのは慎んで」

ハグを拒否したら、彼は私の両手をぎゅうっとつかんで、力強く腕をぶんぶんと振り回した。

「本当に。ごめん。
何か……いろいろごめん!」

私は、何とか手を振り切ろうとする。

「義彦君、やめてって。大きなアクションすると誠実さが伝わるとか、ないから」

小学生じゃないって。40才に手が届こうかという年齢なのに、見たまんま。
永遠の少年だ。

「美帆に迷惑かけちゃった」

「いろいろだね。本当に」義彦君は、私の握ったまま、嬉しそうに笑ってる。

嬉しそうなだけじゃない。

嬉しそうに謝ってる。

いったい彼は、私に何を謝りたいのかと聞きたくなった。


私のこと好きだって言っておきながら、別の女性と婚約したこと?

それとも、私を取引の道具として別の男に差し出したこと?

どっちにしても、ひど過ぎるじゃないの。

謝って済む問題じゃないだろう。こらっ。


私は、ため息をついた。

義彦君をこの場で八つ裂きにしたって、気が済まない。



自分の会社の専務が、頭をにして謝っている。

義彦君、私に謝れば、それで済むと思ってるんだろうか?

ごめんなさいって、そんなふうに明るく謝られても。

やっぱり、水に流すなんて無理だって。

やめてよ。

いったいどうすればいいのよ。
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