オフィスの野獣と巻き込まれOL
お年を召しているけれども、ぴんと背筋の通った女性だと思う。
彼女が、会社に来ると、社内の空気が緊張感に包まれる。
会社に出て来る時は、たいてい着物を着ていると言うのもあると思う。
きりっとして見えるのも、そのせいだろう。
70歳を過ぎた今でも、会社の内部のことには口を出さず、意見を求められて来た時だけ、自分の意見を口にする。
武子さんは、そういうスタンスを守って来た。
先代の社長である夫が生きていた間でも、一歩後ろに下がって見守って来た女性だ。
「実は、武子伯母さまは、先代の社長から会社の株を、全部受け継いでいるんだ」
「株を?」武子伯母さまには、子供がいない。
だから、株を受け継ぐのは、武子伯母さまだけになったんだ。
「そう。だから、どの重役もみんな彼女を無視するわけには行かなんだ」
「へえ。すごいのね」
武子さんは、つまり、義彦専務の伯母さんは、社の株を持つ筆頭株主だなのだ。
ずっと、夫の会社を見守って来ただけだと言っても、影響力が全くない訳ではない。
うちの会社は同族企業で、ずっと身内で経営をして来た。
先代の社長には、後を継ぐ子供がいなかったから、義理の弟が一時的に会社を継いだ。
それは、いずれ専務である義彦君が成長したら、義彦君が会社を継いで、現社長の父親は、すぐにでも会社から退くと思われていた。