オフィスの野獣と巻き込まれOL
義彦君も最初は、オヤジも大変だなあと、他人ごとみたいに思っていたそうだ。
そしたら、なんと、自分にも火の粉が降りかかって来たのだ。
重役は、身内で固めるべきだ。
誰かがそう言いだして。
やる気のない平社員だった父は、会社の重役なんか願ったことないのに専務なんていう、大変な仕事につかされてしまった。
義彦君の話は、どこか他人の話をしているみたいだった。
『会社の内部に入って知らなかったことがたくさんあったよ』
義彦君が時々教えてくれた。
うちの店に来てくれた時のように、一杯飲みながら、義彦君は私に話してくれた。
『会社の実権はね、実は、武子伯母さまが握ってるんだよ』
武子伯母さまとは、亡き先代社長の奥様だ。
義彦君からすると、伯母さんという事になる。
義彦君は言う。
「武子さんは、うちの会社の経営に携わっている訳ではないんだ。
でも、伯母さんのことは無視できないんだ。なんか、こういつも見られてる気がする」
義彦君は、武子伯母さまの真似をする。
振り返りざまにぎろっと睨むのだ。
一度もそんな事されたことないけど。
今ここに、武子伯母さまがいたら、実際そんなふうなんだろうって思う。