オフィスの野獣と巻き込まれOL

あのルックスに、ギラギラした上昇志向が結びつけば、女子社員じゃなくても目立つ。

綿貫専務の話からしても、担当課長という立場で、重役に食って掛かってるみたいだ。

重役に立てつける管理職って、うちのような古い体質の会社では、まず考えられない。

そんな社員がいたら、目立つだろうし、自然に噂も耳に入ってくるはず。

それなのに。

どうしてあの男だけ、そこに居ないような扱いになってるのだろう。


堀川祐一が、オフィスでも目立つような事はしない。

確かに、彼は、影のように人目に付かないようにしている。

だから、私も用事さえ頼まれたりしなければ、この男のことなんて知らずにいた。

「どうして、わざわざそんなことを?」

彼がどんな様子だった?

私は、彼と食事をしてた時の事を思い出そうとした。


食事に誘ったのは、会社の近くのホテルのレストラン。

場所は、ここにしろと義彦君から事前に頼まれていた。

ホテル自体は有名ではないけれど、レストランは素晴らしかった。

このホテルに予約して宿泊することは、まずないけれど。

会社の接待で、会社の偉いさんがここを良く使うというと聞いたことがあった。


無表情だったのも理解できる。

堀川祐一は私に対して関心がなかったのだ。

一晩だけの相手だと思ったのだ。そんな相手に関心を持ったりしない。


やってくる女が誰でも関係なかったんだ。

あいつは、誰が相手でも良かったんだ。

そっか。


私も、この時は、義彦君に頼まれただけで、心底この男と仲良くなりたいわけではなかった。

だから、彼がどう思おうと関係なかったんだけど。

堀川は、そういう目で私のこと見てたんだ。



ああ、やっぱり私……

男にそう仕向けられたんだ。

このままではいられない。泣き寝入りなんてするものですか。

二人に対して、けじめを付けなくちゃ。
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