オフィスの野獣と巻き込まれOL


親しくなるような話のきっかけは、見つかりそうにない。

堀川祐一は黙って黙々と食事をしている。

私は、彼のことを見過ぎないように時々視線をそらす。

素敵ですね。

どんな人間だって、一つくらい褒めるところくらいありそうなもんだ。

けど。

変な格好をしてるから、彼の特徴を褒めるわけにもいかない。

素敵なお洋服ですね、とか、珍しい髪型ですねとか。

なんて、褒められやしない。

何を誉めても、しらじらしいんだよねえ。


当たり障りのない会話を続けることが無難だけど。

共通の話題がつかめない。

だから、会話にならないのだ。

これは、結構つらい。


でも、聞きたいことはいろいろある。

例えば、

あなたは、いったいどうしてそんな髪型をしてるの?

それは、ヅラですか?

ああ、聞きたい。

これは、口に出してはいけない。

いやいや。外見で人を判断してはいけない。

これは、私が接客を通じて得た教訓だ。


外見が穏やかな人が、性格まで穏やかだとは限らない。

髪型が不自然だからって、彼の性格も髪型と同じく、不自然だと思ってはいけない。


髪の毛なんかで、人の善し悪しを決められるものではない。

どんな格好をしようが、髪形をしようがその人の好き好きだし、自分をどんなふうに見せようとかまわないけど。


いくら何でもそれはない。

彼、よーく見ると、元は悪くないと思われる。

うん。

少なくとも、体型は完璧だ。背が高くてすらっとした体つきをしてるし。

それなら、いっそのこと坊主頭だって。そのヘルメットよりはいいと思う。
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