臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
……その割に、意外と可愛い人で、ノリがいい。

それは新しい新事実だと思っている。

だからなんだというんだ。

私と社長は、多少は言い争うけど、何でも言い合えるような間柄でもなんでもないし。
今は近くに感じるけど、それだって野村さんが戻ってきたら終わるんだし。


ああ、やっぱり近くにいるって毒にしかならない。

私は見てるだけで良かったのに。

どうせ手に入らない高嶺の花なら、身近になんて感じたくなかったのに。

完璧完全な超人間だとかでいてくれれば、心配なんてしないし、こんな思いをしなくても済んだのに。

どうせいつかはお見合いでもして、どこかの誰かとくっつくんでしょう?

不器用な優しさや心配なんて、希望していないんだから。


いつの間にか、居場所を作ってしまった存在はやっかいだ。

触れられても、嫌だと思わない相手なんて、とてつもなく困る。


手を重ね合わせて、ふと触れた指先の冷たい感触に右手を見た。

暗闇に慣れた目は、それが何か気づいてしまう。

偽物の“恋人同士”を装うリング。

光にあてると、とてもキラキラした輝きは、見た目だけで意味はない“特別ボーナス”の指輪。


……そんなのいらない。

なんの思いもこもらない、特別なんていらない。

気をつけていたはずなのに。

どうして“特別”になってしまったんだろう。

小さく笑って、そして溜め息をついた。









< 180 / 255 >

この作品をシェア

pagetop