臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「それは腕がなりそうだなぁ」

何かが違う気がする。いったい何の腕がなるのか……聞いてもいいかな?

目を細めている私に構わず、社長は勝手に何か考えている。

「嫌いな食べ物はあるか、小娘」

「和食ですよね? 大葉とマグロが苦手です」

「そこはお前、特にありませんとか言うのが普通だろう。そう言うところはちゃっかりしてんだよな」

「よけやすいならサクッとよけちゃいますが、刻み大葉が入っていたら、少し行儀が悪い事になってしまいます」

社長はしばらく黙り込んで、それから頷いた。

「じゃあ、とりあえず大葉とマグロは入れないでもらおう。一瞬、どうなるのか考えたが……」

目が合うと困ったように微笑みを返す。

「細かく刻んでいても、私は最後のひとかけらまで一つ一つ取り除きますよ?」

「うん。容易に想像できた。お前は気にしない奴だよな」


いや……きっと社長も人のこと言えないでしょう?


無言の問いには無言の苦笑で返される。

それから、手を握られてそのまま引かれて歩きだした。

地下駐車場のコンクリートに、私のハイヒールの靴音と社長の靴音が響く。

二つ重なった足音。つながれた手。

……どうしよう。手汗かいてきてるんじゃない?

それってちょっと恥ずかし……。
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