優しい大地とお兄ちゃん





「・・お前、なんて顔してんだよ」



大地は私を見るなり、心配そうな顔でそう言った。



「な、なんの事?」



私は笑顔を崩さなかった。

大地に心配させたくなかった。

お兄ちゃんの事で、大地の存在を忘れていたなんて言いたくなかった・・。



「・・・」



大地は何も言わず、私の手を握って歩き出した。



「・・大地?」


「・・・」



大地は無言のまま、学校まで何も喋らなかった。

教室にカバンを置くと、そのまま屋上まで連れていかれた。



「大地?どうしたの?」



屋上に来ても、何も喋らない大地に、私は耐えられず口を開いた。



「・・それは、こっちの台詞だろ。さくら、何があったのか、ちゃんと言ってくれ。そんな顔で隠されたら、俺・・」



そう言って、大地は繋いでいた手に力を入れた。

少し手が痛かったけど、そんな事よりも、不安そうな大地の顔を見て、私は手よりも心の方が痛かった。


大地・・。

ありがとう、心配してくれてるんだね・・。

・・私、ちゃんと言うよ。

だから、そんな傷ついたような顔しないで?



「大地、ごめんね・・ちゃんと話すから・・」


「・・・」



私がそう言うと、大地は手の力を緩めてくれた。



「ごめん、手、痛かったよな・・」


「ううん、大丈夫だよ」



そう言って私は、大地に優しく微笑んだ。


大丈夫だよ、大地・・。

手なんて全然痛くない。

大地の傷ついたような顔を見る方が、私は辛いよ。


校舎から見えない位置に座ると、ちょうどチャイムがなった。



「チャイム、鳴っちゃったね・・」


「このまま、ちょっとサボろう」


「・・うん」



そう言うと、私は空を見上げた。

どこまでも広い空は、どこまでも青かった。

ふわふわ浮いている雲は、風にちぎれて形を変えた。

私の悩んでる事なんて、小さく思えた。



「大地、私ね、もしかしたらお兄ちゃんに避けられてるかもしれない・・」


「え?」



大地は驚いたように私を見た。

私はずっと、空を見上げていた。





< 28 / 32 >

この作品をシェア

pagetop