優しい大地とお兄ちゃん
「・・お前、なんて顔してんだよ」
大地は私を見るなり、心配そうな顔でそう言った。
「な、なんの事?」
私は笑顔を崩さなかった。
大地に心配させたくなかった。
お兄ちゃんの事で、大地の存在を忘れていたなんて言いたくなかった・・。
「・・・」
大地は何も言わず、私の手を握って歩き出した。
「・・大地?」
「・・・」
大地は無言のまま、学校まで何も喋らなかった。
教室にカバンを置くと、そのまま屋上まで連れていかれた。
「大地?どうしたの?」
屋上に来ても、何も喋らない大地に、私は耐えられず口を開いた。
「・・それは、こっちの台詞だろ。さくら、何があったのか、ちゃんと言ってくれ。そんな顔で隠されたら、俺・・」
そう言って、大地は繋いでいた手に力を入れた。
少し手が痛かったけど、そんな事よりも、不安そうな大地の顔を見て、私は手よりも心の方が痛かった。
大地・・。
ありがとう、心配してくれてるんだね・・。
・・私、ちゃんと言うよ。
だから、そんな傷ついたような顔しないで?
「大地、ごめんね・・ちゃんと話すから・・」
「・・・」
私がそう言うと、大地は手の力を緩めてくれた。
「ごめん、手、痛かったよな・・」
「ううん、大丈夫だよ」
そう言って私は、大地に優しく微笑んだ。
大丈夫だよ、大地・・。
手なんて全然痛くない。
大地の傷ついたような顔を見る方が、私は辛いよ。
校舎から見えない位置に座ると、ちょうどチャイムがなった。
「チャイム、鳴っちゃったね・・」
「このまま、ちょっとサボろう」
「・・うん」
そう言うと、私は空を見上げた。
どこまでも広い空は、どこまでも青かった。
ふわふわ浮いている雲は、風にちぎれて形を変えた。
私の悩んでる事なんて、小さく思えた。
「大地、私ね、もしかしたらお兄ちゃんに避けられてるかもしれない・・」
「え?」
大地は驚いたように私を見た。
私はずっと、空を見上げていた。