さよなら、世界
「気になるの? 彼のこと」
渡辺マリコは私より背が高くて手足が細長い。背中に流れた真っ黒のストレートヘアを揺らして、彼女はうんうんとうなずく。
「瑞穂ちゃんも隅に置けないなぁ」
「ち、ちがうよ!」
大きな声が出てしまい、はっと振り向く。いくつかの穴顔と一緒に、川崎七都がきょとんとした表情でこちらを見ている。だけど彼はすぐに視線を外した。
万にひとつ誰かに悟られることがないように、私は、彼と接点を作らないようにしなければならない。
私が川崎七都の異母兄妹であることや同じ家で暮らしていることは、彼にとってはきっと恥ずべき事実だ。私だって、自分の出生の秘密を探られるようなことは避けたい。
「なにか、用?」
気まずさと気恥ずかしさでぶっきらぼうな口調になってしまい、そんな自分に嫌気がさす。でも、渡辺マリコに気にする様子はない。
「これ、結局借りっぱなしになっちゃってたから。ありがとね」
「ああ……」
差し出されたノートを受け取ると、彼女は窓の外にちらりと視線を向け、声を弾ませた。
「ね、お昼一緒に食べない?」