さよなら、世界
「瑞穂ちゃん?」
「あ、ごめん」
目を向けると、窓の外にいる渡辺マリコがにこっと笑って、向こう側から両手を差し出した。
「さ、カモン」
「え?」
とっさに思い出す。そうだ、ランチにいい場所があるって彼女に誘われたんだった。そして彼女はいきなり窓を飛び越え、私に向かって両手を伸ばしている。
「いやいやいや」
私は全力で首を振った。
「回っていくから、待ってて」
本来、中庭や裏庭に出るには、生徒玄関まで戻って靴を履き替えないといけない。でも教室の反対側にある玄関まで行くのは面倒なので、ほとんどの生徒は渡り廊下からそのまま外に出てしまう。
究極的には渡辺マリコがやったように廊下の窓を乗り越えるのが一番の近道だけど、さすがに私にはハードルが高かった。男子生徒ならやんちゃなタイプが窓から外に出るところを見たことがあるけれど、女子でそれをやっている人間は、彼女以外見たことがない。
そんな渡辺マリコは、裏庭の芝生に直接座り込み、握りこぶしほどもある不格好なおにぎりをほおばっていた。
品が良さそうな見た目と違って、彼女はだいぶ突拍子がない。もともと人見知りをしないタイプなのだろう。初対面の私にいきなり「ノート貸して」と言えるくらいだから、肝が据わっているのは確かだ。
「やっぱり外は気持ちいいねぇ!」
「この時期って、紫外線量が多いらしいけど……」
彼女がいる日向からすこし離れた木陰でお弁当を開いていると、渡辺マリコはサルのおもちゃみたいに歯をむきだした。