Bitter Chocolate
22
ヒカリは武志の子供だとわかっていても
武志とやり直す気にはなれない。

だけど子供のことを考えると
父親と引き離していいのかと悩んだ。

とりあえず離婚の話は暫く保留にすることにした。

ヒカリは要にどう話せばいいのか考えれば考えるほどわからなくなった。

どうしたら要を傷つけずに済むのだろうか?

だけど傷つけないなんてどう考えても無理だった。

ヒカリは正直に話すことにした。

そして10ヵ月ぶりに要の店を訪れた。

「やっと片付いたのか?」

もちろん要はヒカリの離婚が成立して逢いに来たんだと思っている。

ヒカリはなかなか言い出せなかった。

「あのね、要…落ち着いて聞いてほしいんだけど…
要とはもう会えない。」

要は自分の耳を疑った。

「え?今、何て言った?」

「今日は別れるために来たの。」

要は暫く言葉が見つからなかった。

「ごめん。」

「理由を言えよ。

武志とやり直すのか?」

「…うん。ごめん、そうすることにした。」

武志とやり直すつもりはないけれど
そう言った方が要も諦める気がした。

「仙台に行ってる間…気持ちが変わったの。」

要の顔色が明らかに変わった気がした。

「わかった。

それがお前の気持ちなんだよな。」

「うん。」

要はヒカリの言葉が信じられなかった。

あまりのショックで頭が整理できなかった。

「私のことはもう忘れて。」

ヒカリは要をわざと傷つけたことが辛かった。

結局、子供が出来たことはどうしても言えなかった。

要の家から泣きながら帰る道の途中で、
ヒカリは突然激痛に襲われた。

うずくまるヒカリを通行人が気付き救急車を呼んでくれた。

気がつくと病院のベッドの上にいた。

母と兄がヒカリが目覚めるのを待っていてくれた。

「赤ちゃんは?」

ヒカリは目を覚まして一番最初に聞いた。

母は首を横に降った。

ヒカリは泣き叫んだ。

「ヒカリ、落ち着け。
かえって良かったんだよ。

武志とやり直す気はなかったんだろ?」

ヒカリにとってはそんなことより
子供の命の方が大切だった。

例えもう、愛せない男の子供だとしても
授かった命を失いたくなかったのだ。

そして武志が病室にやって来た。

「ホントはわざと流産させたんだろ?

アイツの子供かもって疑ってたけど
ホントに俺の子供だったんだな?

考えたら俺との子供なんてお前には邪魔なだけだよな。」

武志はあまりのショックでヒカリに暴言を吐いた。

やはり武志はヒカリを信じて居なかった。

ヒカリは怒る気力もなく

「もう来ないで。」

とだけ言った。

武志は自分の言ったことを後悔したが
ヒカリが子供を失ったことが許せなかった。

子供を失ったことでヒカリとの最後の望みを失った。

その後、ヒカリは武志と離婚した。

もちろん、ヒカリは要の元にも戻らなかった。

要は何も知らず可南子に迫られて
結局、ヨリを戻すことにした。

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