Bitter Chocolate
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惠佑はヒカリが別れを切り出すことがわかっていた。

だけど嘘はつかれたくない。

だからつまらない言い訳など出来ないように核心をついた。

「好きな男がいるってのはわかってる。

でも…その人とはうまくいかないんだよね?

だからオレの所に来たんだよね?」

「ごめん…惠佑くんみたいな優しくてカッコいい人と普通に恋愛したかったの。

でも…私…どうしても彼に惹かれるの。」

「二人に未来はあんの?」

「…ない。

愛し合えばお互い自分が自分じゃなくなるの。

彼とは地獄まで堕ちて…苦しくて…
一緒に居ると息も出来なくなる位辛かった。

もうあんな恋はしたくないの。」

惠佑はヒカリの手を握った。

「俺を見て。ちゃんと見てよ。

ヒカリはホントの俺をまだ知らないだろ?

もっと深く知って…

それでもダメならその時は諦めるから。」

「でも…さっきまで彼に逢って…
惠佑くんが居るのに彼と…。

そんなこと惠佑くん許せないでしょ?」

「許せないよ!

もちろんヒカリが他の男と寝るのを黙って見てられるほど
俺は間抜けじゃないし、

今だってその男を殴りたい気分だ。」

「じゃあ私を殴って
それでもう終わりにして。」

「そんなこと出来たら楽だろうけど…
俺だって同じようにヒカリの事がどうにもならないくらい好きなんだ。」

ヒカリは言葉を失った。

惠佑の想いはヒカリの胸に痛いほど突き刺さった。

「ヒカリ…ちゃんと俺を見てよ。

オレの事何にも知らないくせに
簡単に別れるなんて言うなよ。

絶対にオレの事好きにさせるから。」

惠佑はヒカリにキスをした。

要とは全然違うけど…
惠佑とキスするのは義務だと思ってたけど嫌な訳じゃない。

ヒカリはさっき要と抱き合った場所で
今度は惠佑と何度もキスをした。

「ヒカリ…俺を見て。」

惠佑の潤んだ瞳を見ると、惠佑が辛いのがわかった。

ヒカリは自分から惠佑にキスをしたくなった。

「惠佑くん…ごめんね。」

惠佑はヒカリをギュッと抱きしめるともう一度キスをする。

ヒカリは惠佑に痛いほど愛されて
自分の身体が段々熱くなっていくのを感じた。

きっと自分もちゃんと惠佑のことも好きなのだと思いたい。

要とは愛し方が違うだけだと思いたかった。

惠佑ともう一度やり直そうと思った。

「箱根…行くよな?」

「…うん。」

そしてヒカリは金曜の夕方、
仕事が終わると惠佑と箱根に出掛けた。

その間要から何度も連絡が来たけど
ヒカリは逢いに行かなかった。

雨の箱根は思ったより寒くて霧が立ち込めていた。

露天風呂の着いた部屋はヒカリも初めてだった。

ヒカリは興味深く部屋を見回していると
突然後ろから惠佑に抱きしめられた。





















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