Bitter Chocolate
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ヒカリは後ろから抱きしめられて
身動き出来ないほど緊張していた。

「ヒカリ…一緒にあの温泉に入らない?」

耳元で惠佑が囁いた。

ヒカリの敏感な耳は惠佑の息がかかるとビクンと身体が反応した。

「耳弱いんだな。」

惠佑はそう言っていたずらっぽく息を吹き掛けた。

ヒカリは耳を押さえて惠佑から離れた。

惠佑はまた子供みたいに笑うと片えくぼが表れて
ヒカリの胸はドキドキさせられる。

「先に入って。10分経ったら俺が行くから。

それとも後にする?

だけど後から入る方が勇気要る気がするんだけど…」

「先に…その代わり電気はつけないで。」

「わかった。」

惠佑はヒカリを先にお風呂に入れた。

ヒカリはその10分間、緊張しっぱなしだった。

そして惠佑がやって来た。

惠佑が一緒にお風呂に入ってくると
段々緊張は解けてきた。

惠佑は昔の話をしたり
仕事の失敗談などを話したりして
ヒカリを笑わせてくれた。

そして不意にキスされてヒカリを抱きしめる。

白く濁ったお湯が波立って浴槽から溢れ
さっきより少し下までヒカリの身体が見える。

惠佑はヒカリを抱き上げ
その白い美しい胸にキスをした。

その夜、ヒカリはいつもと違う惠佑を見た。

布団の上の惠佑はいつもと別人で
ヒカリは要の事を考えられないほど惠佑に愛された。

「おはよう。」

朝、目を覚ますと惠佑は普段の惠佑に戻っていた。

「おはよう。」

「よく眠れた?」

「うん。」

「ヒカリ、おはようのキスは?」

ヒカリは惠佑の唇に軽く唇を合わせると
惠佑はヒカリを抱きしめた。

「くぅー、幸せだー。」

惠佑は嬉しそうに笑い、あのエクボをまたヒカリに見せる。

「ヒカリは?幸せ?」

ヒカリは迷うことなく頷いた。

こんなに穏やかで幸せだったのは武志と初めて結ばれた時以来だ。

「惠佑くん、ありがとう。
来て良かった。」

そして惠佑とヒカリは普通の恋人同士のように
箱根のデートをゆっくり楽しんで帰ってきた。

惠佑がヒカリを家まで送ってくれて
ヒカリが車から降りるとそこに要が待っていた。

惠佑がヒカリに近づいてくる要に気がついて
二人の間に立った。

「ヒカリ…誰だよ?」

要がヒカリにそう聞くと惠佑がヒカリの代わりに答えた。

「お前こそ誰だよ?

ヒカリにもう近づくな!」

「ヒカリ!」

ヒカリは惠佑に言った。

「惠佑くん、ちゃんとこの人と話すから
今日は帰ってもらえる?」

「大丈夫だよな?」

「うん。旅行ありがとう。楽しかった。」

惠佑は優しくヒカリの髪を撫でて頷いた。

「ヒカリ…後で連絡してな。」

ヒカリが頷いて惠佑に手を振った。

その一部始終を見ていた要は
惠佑とヒカリがただならぬ仲だとわかった。

「俺とはもう終わりにしたいってことか?」

「私…彼の事が好きなの。」

「もう寝たのか?」

ヒカリが頷くと要はヒカリの腕をつかんで
自分の車に乗せた。

「何のつもり?」

「お前は誰にも渡さない。」

そういうと要はヒカリにキスしようとした。

するとドアが空き、惠佑が要を車から引きずりおろした。

「ヒカリにもう手を出すな!」

そう言ってヒカリを要の車から降ろした。


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