Bitter Chocolate
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ヒカリの返事がなかなか無いことに惠佑は苛立ち
とうとう痺れを切らした。

「本当はまだあの男が好きなんだろ?」

あんなに優しかった惠佑が変わっていく姿を見て
ヒカリは武志のことを思い出した。

このままでは惠佑も幸せにはなれないとヒカリは感じていた。

ヒカリ自身もそんな惠佑と幸せになれるハズがない。

「惠佑くん、私…一度失敗してるの知ってるでしょ?

だからすぐに返事は出来ないと思う。

それが無理なら私たち、別れた方がいいと思う。」

ヒカリは惠佑にそう言った。

惠佑はその言葉を受け入れた。

「俺もそう思う。

このままじゃ俺は…ヒカリを傷つける。」

ヒカリと惠佑は別れることになり
ヒカリは惠佑と顔を合わせないように仕事も辞めた。

そしてヒカリは決心した。

「お兄ちゃん、私…ここを出てく。
違う土地に行って1からやり直すことにする。」

そしてヒカリは兄以外の誰にも居場所を告げずに
家を出て知らない場所で一人で暮らし始めた。

ヒカリが居なくなったことを要はまだ知らなかった。

ヒカリの家の前まで何度も行ったけど
結局ヒカリに連絡を取ることもなく
要はヒカリが惠佑と別れた事も知らないままだった。

惠佑は麗子からヒロ経由でヒカリがこの街を出ていったことを知らされた。

「どこに行ったのか麗子さんも知らないの?」

「うん。
お兄さんに聞いてみたけどそっとしておいて欲しいって…」

「あの男は?あの男と一緒に行ったんじゃ…」

「要さん?

お店…ちゃんと開けてるよ。

多分…ヒカリが実家を出てった事も知らないと思う。」

惠佑はヒカリと別れたことを後悔していた。

「惠佑くん…どうしてヒカリを信じてあげなかったの?
ヒカリは惠佑くんとやっていこうって思ってたのに…」

「だったらプロポーズを受けてくれるはずだろ?」

「ヒカリは前の結婚で相手を傷つけちゃったからだよ。

もちろんヒカリだって傷ついたし…

結婚するのは前より簡単じゃないと思うよ。

慎重になるのは当たり前だよ。

時間が欲しかっただけだと思う。

惠佑くんは結局ヒカリが信用できなかったんでしょ?」

惠佑は返す言葉もなかった。


麗子はヒカリがまだ要を忘れていないことを知っている。

でも忘れようと努力していたのも知っていた。

要のお店には時々チョコレートを買いに行っていたが
ヒカリのことは話せなかった。

「ヒカリは…元気にしてる?」

麗子がチョコレートを買いに行くと要は必ず麗子にそう聞いた。

「はい。」

「あの男とはうまくいってる?」

「…はい。」

麗子は嘘をついたけど本当の事を教えたかった。

「幸せならよかった。」

そう呟く要に麗子は思いきってヒカリの事を伝えた。

「実はヒカリ…惠佑くんと別れたんです。

原因は要さん…だと思う。

ヒカリ…プロポーズされたんだけど…返事できなくて…

惠佑くんと揉めたの。

それで…別れて…今は消息不明なの。

お兄さんは居場所を知ってるみたいだから元気だと思うけど…。」

要はその話を聞いて居ても立ってもいられなくなった。

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