Bitter Chocolate
40
その頃要は後輩と別れ、
ヒカリにどうしてももう一度逢いたくなった。

ヒカリの家の前まであてもなく来てしまった。

ヒカリの部屋の窓を見上げると
電気が消えていてヒカリがまだ帰ってないことを察した。

そしてヒカリが惠佑に抱かれていることを想像して
頭がおかしくなりそうだった。

ヒカリは要の想像の通り惠佑の腕の中にいた。

ジャグジーの中で惠佑に抱かれて
動きに合わせるようにお湯が音を立て
波立って溢れていく。

ヒカリの喘ぐ声が反響する。

その声が惠佑を更に刺激した。

「ヒカリ…気持ちいい?」

ヒカリは遠退きそうな意識の中で

「…うん。」

と答えた。

惠佑の動きが早くなるとヒカリはもう立っていられず
その場に座り込んだ。

「大丈夫?」

惠佑はヒカリをタオルにくるみ抱き上げた。

バスルームを出て
ヒカリをベッドに寝かせ
濡れた身体を丁寧に拭いた。

ヒカリはもう恥ずかしいとか思っている余裕もなく
惠佑のされるがままだった。

全てが終わると惠佑はヒカリを抱きしめて眠った。

ヒカリもいつのまにか惠佑の腕の中で眠りについた。

要のことはずっと頭の中にあったが
それを忘れるように惠佑の身体にしがみつき
自分の身体を密着させて眠った。

次の日の朝、
何となく惠佑の顔を見るのが恥ずかしかった。

昨晩、あんなに乱れた姿を見せてしまったからだ。

惠佑はそんなヒカリが可愛くて愛しくて
更にきつくヒカリを抱きしめる。

ホテルの部屋は窓も閉まっていて朝も夜もない。

惠佑はまたヒカリの身体を愛し始め
昨日と同じようにヒカリの身体に赤い印をつけた。

そしてそれが終わるとヒカリに言った。

「ヒカリ…結婚しよう。」

ヒカリはすぐに返事が出来なかった。

それを察してか
「返事は後でいいよ。」
と惠佑は言った。

「うん。考えてみる。」

ヒカリは武志とうまくいかなかったので
結婚に対して少し臆病になった。

それは要とは関係なかったが
惠佑はそう思ってなかった。

惠佑はヒカリの心にはまだ要が居て、
それが理由で惠佑との結婚に慎重になっていると思っている。

ヒカリと愛し合いながらも要の存在が少しずつ惠佑の心を蝕んでいた。

その事にまだ惠佑自身も気付いていなかった。

ヒカリと惠佑の間に小さな溝ができて
その溝はどんどん深くなる。

惠佑はヒカリと連絡が取れないだけで激しい嫉妬に襲われた。

自分が自分では無くなっていく気がして…
いつかヒカリを傷つけてしまいそうで怖くなった。

結婚など言い出さなければよかった。

惠佑はヒカリから結婚の返事が来ないことに苛立って
そんな話をしたことを後悔するようになっていった。
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