Bitter Chocolate
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「その手を退けろよ!」

要は入って来るなりいきなり晃彦の腕を掴んでヒカリの膝から離した。

ヒカリはビックリして要を見た。

晃彦はそんな要を見て呆れて言った。

「そんなに触らせたくないならこんなところで働かせるなよ。」

「武志、お前は何で黙ってるんだよ?」

今度は武志に向かって要が怒る。

「俺にはもう関係の無い女だからだ。

少なくとも俺だったらこんな仕事には就かせ無かったけどな。」

武志にしたら晃彦がヒカリの脚に触れたことは決して面白くは無かったが
これもヒカリが自分を裏切った罰なのだと思ってわざと黙って見ていた。

晃彦の態度は腹立たしかったが
それでもヒカリを気にかけるような態度を見せたくなかった。

要は頭に血が上って

「ヒカリ、ちょっと来い!」

とヒカリの腕を掴むとヒカリはそれを振り払った。

「仕事中なの。帰って貰える?」

要は強引に店から連れ出そうと思ったが
店のスタッフに止められ外に出されてしまった。

要は仕方なく外でヒカリが出て来るのを待った。

落ち着かない様子のヒカリを見て武志はウンザリする。

「要さんとどうなってんだよ。」

「…」

黙ってるヒカリに武志はますます苛立った。

「俺には知る権利があるだろ?」

武志がヒカリを責めていると晃彦がそれを止めた。

「まぁまぁ落ち着けよ。

ここで仕事してるって事は色々あって別れたんだろ?
こんなところで怒鳴るなよ。

酒がマズくなる。」

「申し訳ありません。」

ヒカリが頭を下げ、武志はそれ以上何も言えなくなった。

「しかし、武志の元妻は美人だな。

俺のタイプだ。

要が手出すのも分かるな。」

武志は不満気な顔でヒカリを見た。

「そろそろ帰りましょう。」

そう言って武志はまだ飲み足りないという晃彦を強引に連れて帰っていった。

ヒカリは要に居場所を知られて憂鬱になった。

案の定、店を出たところで要に捕まった。

「こんな仕事辞めろよ。

金なら俺が…」

「お願い、もう私に構わないで。」

「ヒカリ!」

要に腕を掴まれただけでヒカリの心は乱れる。

そんなヒカリの気持ちが分かるのか
要はヒカリを引き寄せて抱きしめた。

「やっと見つけたんだ。
もう離したくない。」

ヒカリは抵抗したが要に抱きしめられると動けなくなる。

「俺がヒカリ無しで生きていけないって知ってるだろ?」

決心して要から離れたはずなのに
ヒカリは要の顔を一目見ただけでその決心が簡単に揺らいでしまった。

要は一刻も早くヒカリの店に来るため
車ではなく電車で来たと言った。

もちろん終電はもう無くて
ヒカリの部屋に泊めるしか無い。

そしてその小さな古いアパートを見たとき
要は胸が痛くなった。

「こんな所であんな仕事をしてまで俺と離れたかった?」

「あんな仕事って…あれだって立派な仕事よ。
バカにしないで。」

2人が話してるとインターフォンが鳴った。

「こんな時間に誰だよ?」

時計はもう1時半を過ぎていた。

ヒカリはドアの外に居るのが誰か見当がついた。

「ヒカリちゃん、帰っててるんだろ?

その男誰だよ?

俺を無視して男を連れ込むなんてとんだ淫乱だな。」

利秀に引っ越して間もないこの場所がもう見つかってしまった。

要は震えるヒカリを見て
その男が普通じゃないと思った。

「俺が居るから大丈夫だ。」

そう言ってヒカリの髪を撫で
チェーンをしたまま玄関の扉を開けた。








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