Bitter Chocolate
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要がドアを開けると
小太りな若い男が立っていた。

「どちらさまですか?」

要がそう聞くと男は

「お前が誰だよ?
ヒカリちゃんの何なんだ?」

と聞き返して来た。

「こんな夜遅くに非常識だと思わないんですか?

てゆうか彼氏でも無いのに1人暮らしの女の子の家に訪ねて来る時点でアウトですよ。」

男は要を上から下まで怪訝そうに見ている。

ヒカリはその声で男が居酒屋で一緒に働いていた利秀だとわかっていた。

「そういうお前は誰なんだよ?」

「それだけ尾け回しててヒカリが俺の彼女だって知らないのか?」

要の言った言葉に男は一瞬黙り込んだが

「嘘つくな!ヒカリちゃんの彼氏は俺だ!

ヒカリちゃん!出て来てよ!」

と今度はドアを蹴飛ばした。

「通報しますよ。」

要が強い口調で迫ると男は少し慌てた様子で

「いいから部屋に入れろよ。
ヒカリちゃんに俺が彼氏だって話してもらわないと…」

と意味不明なことを言ってきかない。

要が警察に通報したが、
利秀はそれがウソだと思い込んで動かずにいた。

暫くすると警察官がやってきて利秀は連れて行かれた。

ヒカリは男について警察官に話しをした。

「前のバイトで一緒だった人です。

何かとしつこくされて…引っ越ししたばかりで部屋を知らないはずなのになぜかここまできたんです。」

結局ヒカリはまたこの街を出なくては安心できなくなった。

「ヒカリ…一緒に暮らそう。

1人には出来ない。

あの仕事も辞めてほしい。」

ヒカリはとりあえず要の家の近くに部屋を借りることにした。

要と暮らすことはしなかったが要は毎日ヒカリの部屋に様子を見に来た。

ヒカリはなかなか要を部屋にはあげなかった。

それでも要は毎日決まった時間に
ヒカリの顔を見に来た。

ヒカリはそれを待つようにその時間には必ず部屋にいたが
その日は要が部屋に来なかった。

そんなことは初めてで
ヒカリは心配になって要の店を訪ねたが休みだった。

裏口に回ってインターフォンを鳴らしたが反応が無い。

電話してみると
「ヒカリ…上がってきて…」
とだけ言って切れた。

ヒカリが部屋に入ると要がベッドに横たわり
うなされていた。

要のおデコに手を当てると熱がかなりある。

ヒカリは要の看病をしているうち要の横で眠ってしまった。

気がつくと朝陽がカーテンの隙間から差してるのが見える。

ヒカリが再び要のおデコに手を当ててみると
昨日より熱はだいぶ下がって居た。

ヒカリはお粥を作って要を起こし、
食べさせると薬を飲ませた。

「来てくれたんだな。
もうダメかと思ってた。
部屋にも上げてくれないし…」

「ごめん…部屋に上げたら私…また要とそうなったら…
今度はもう逃げられない気がして。」

要はヒカリが怯えながら
ここに来たことに気がついていた。

今、ヒカリを抱きしめたらまるで壊れてしまいそうだった。

「ヒカリは…まだ決心がつかない?」

「私…要が怖いの。

こうしてるだけで…胸が苦しくなる。

私は要の前でいつも自分を見失うの。」

「わかった。ヒカリの気が済むまで…
俺のところに来てくれるまで…待つよ。」

要はヒカリを抱きしめたかったが、
そのままヒカリには触れずに帰した。

ところがヒカリは自分の部屋に戻る途中で
自分のアパートの前に利秀が立っているのを見た。

ヒカリは利秀に気付かれないように急いで引き返し、
要の元に戻った。

「どうした?」

「あ…あの男が…部屋の前に…」

震えるヒカリを今度は躊躇せずに要が抱きしめた。

「助けて…」

「大丈夫。俺が居るから。」

ヒカリはまた要の側から離れられなくなった。












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