Bitter Chocolate
6
「あれ?ヒカリは?」

可南子が化粧室から戻るとヒカリの姿は消えていた。

「何か用事を思い出したとかで帰ったよ。」

可南子は二人になるチャンスだと思ったが
要には全然その気は無い。

「お店終わったらどこかで食事でも…」

「悪いけど今日は予定が…明日の準備もある。
ジャマだから帰ってもらえるかな?」

「ジャマだから…って。
要さん、そんな言い方無いんじゃない?
私と付き合うって言いましたよね?」

「今日、付き合うって言ったかな?

それに付き合うって言っても俺はあんまり時間がない。」

可南子は思い出していた。

あの夜、ヒカリの家でのBBQの帰り道で言ったことを…

「あの…要さんて彼女とか居るんですか?」

「居ないけど…」

「だったらアタシと付き合いません?」

「まぁ、暇な時なら…」

暇な時なら…って今から考えれば変な返事だ。

意味を間違えて捕らえてる気もする。

暇な時なら付き合う…って彼氏になるとは意味が違う。

可南子は自分の都合のいいようにヒカリに話していただけだ。

(何とかして要さんを私のモノにしなくちゃ…)

「じゃあ、何か手伝いますよ。」

可南子はそう言ったけど要は明らかに迷惑そうだ。

「悪いけどこれから人と逢うんだ。
帰ってもらえないかな?」

可南子が不意をついて要にキスをした。

要はそれを不快に思って可南子を突き放した。

「こういうことするならもう来ないでくれ。」

「彼女居ないんでしょ?
何なら身体だけの関係でもいい。
そばに居させて。」

「そういうの望んでないから。
抱きたい女なら別にいるから。」

可南子はカッとなった。

へりくだってまで手に入れたい男だったのに…
冷たくされてプライドが傷ついた。

可南子は昔から男に振られたことなどなかった。

狙った男は必ず落とせると思ってた。

実際に可南子は目立つほどの美人だし色気もある。

大抵の男は可南子を好きになった。

だから自信があったのだ。

それを見事に断られて可南子の心中は穏やかじゃなかった。

(絶対に落としてみせる。)

可南子は心の中でそう思っていた。

可南子が帰ると要は支度をして出掛けた。

もちろんヒカリに簡単に逢えるわけじゃない。

要が連絡したのはヒカリの夫の武志だった。

「飲まないか?」

武志は何も知らずに要と飲みに行った。

そして武志はかなり飲んで酔っぱらってしまった。

要は武志を介抱しながらヒカリのいる武志の家に向かった。

「武志飲み過ぎちゃって…
寝室まで運ぶよ。」

「ここで大丈夫ですから。」

要はヒカリの言葉を無視して
武志を連れて2階の寝室まで勝手に上がっていった。

そして武志を寝かせるとヒカリの元へやって来た。

「ありがとうございました。」

「逢いたかったよ…ヒカリ」

要はヒカリの髪を撫でた。

ヒカリは要から離れた。

「何するの?」

「どうしようもなく逢いたかったんだ。」

「お願い、帰って。」

拒むヒカリの頭を抑え要は強引にキスをした。




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