飛行機雲










「なんで…翼がそんな悲しい顔…してるの」




呆然とした。




翼の、あまりにも


切ない瞳に。






また、暖かい翼の胸に


引き寄せられた。




今度は、優しく

包み込むように。






「俺…離れたくないよ…っ行きたくない…」




次々と流れる翼の涙は、

海風にふれて、冷たかった。






行きたくない…?


何…が?




泣かないでよ…翼


…そんなに苦しそうな顔

しないでよ…





今は、わけのわからないまま


翼を抱きしめ返すことしか


できなかった。







冷たい涙が

私の肩に落ちて

強く結んだ翼の指に滲んでいった。















< 83 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop