飛行機雲
「なんで…翼がそんな悲しい顔…してるの」
呆然とした。
翼の、あまりにも
切ない瞳に。
また、暖かい翼の胸に
引き寄せられた。
今度は、優しく
包み込むように。
「俺…離れたくないよ…っ行きたくない…」
次々と流れる翼の涙は、
海風にふれて、冷たかった。
行きたくない…?
何…が?
泣かないでよ…翼
…そんなに苦しそうな顔
しないでよ…
今は、わけのわからないまま
翼を抱きしめ返すことしか
できなかった。
冷たい涙が
私の肩に落ちて
強く結んだ翼の指に滲んでいった。