そして目覚めの口づけを
髪の毛は寝癖だけは直してあるものの七三分けではなく自然に任せた状態で、眼鏡はかけていないし変な色でシルエットがダサイトレーナーやジーパンとかではなくて無難な黒のポロシャツにグレーのスリムなズボンを着用。

ごくごく普通の装いなんだけれども、今までが今までだったし、そして何よりスタイルが良いから格段にお洒落な感じに仕上がっている。


ど、どーした貴志!?

一体どういった心境の変化だ!?


思わず心の中で突っ込みを入れながらガン見していると、そんな私の気配に気付いたようで、彼がこちらに視線を向けた。


「あ、これからお茶?」


朝の不機嫌タイムからは無事に抜け出せたらしく、すっかり口調はいつもの貴志さんになっている。


「キッチンの方はもう終わってるから。どうぞ、使って」


だけどその紳士的な立ち居振舞いでビジュアルがそれなもんだから、更に違和感が増大してしまって。


「……今日は一日それで行くんですか?」


そんなの彼の勝手なのに、思わず事情聴取していた。


「え?」

「髪はセットせずに、裸眼で過ごすんですか?」

さすがに「ヘンテコなコーディネートも今日は封印ですか?」とまでは聞けなかった。

もし、万が一、あれがまごうことなき彼の生まれもってのセンスだとしたら心に深い傷を負わせてしまう。
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