ハッピーエンドなんていらない



翌日の放課、わたしのあげたイヤホンを、見せびらかすようにして曲を聴いている雪。

よく放課に曲を聴いているけれど、今日は特に自慢げだ。


そうして周りの子にそれはどうしたのかと聞かれるたびに、

「彩芽に誕プレとしてもらったんだ」

と嬉々と語っている。

恥ずかしいようで嬉しいようで、なんだかむずがゆい。



だけど、ふとした瞬間にうつる視線が。

その先にいる、紫苑と笑っている湊が。

わたしが、まだ湊のことを好きであることを実感させる。

それが悲しいと思うのは、少なくともわたしが雪を好きになりかけているから。


それから数日したある日の帰りのことだった。

また先生に頼まれごとをしてしまい、図書室に行くのが遅くなってしまった。


…案の定、図書室にはいつぞやのカップルがいた。

まだ事前とはいえそういう雰囲気なので、邪魔する勇気もなく教室に行くことにした。

多分開いているだろうと、信じて。

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