ハッピーエンドなんていらない
幼馴染だから、と縛られるくらいならいっそ、幼馴染なんてやめてしまいたい。
けれどやめることができないのは、わたしが知っているからだ。
幼馴染なら、彼女でなくても湊の側にいる権利があるということを。
その権利を、失いたくない。
「、彩芽?」
わたしを呼ぶ声で我に返る。
そちらを見るとふわりと髪を揺らしながらわたしを心配そうに見つめる紫苑がいた。
優しい声と顔に、チクリと胸が痛む。
「な、に?」
無理に笑わず、首を傾げて尋ねる。
「いや、ぼーっとしてたから、どうしたのかなって」
心配しちゃって、と付け足し微笑む紫苑の笑顔がイタイ。
こんなに優しいから、湊に選ばれたのだ。
可愛いから、湊に選ばれたのだ。
どこを比べてもわたしは紫苑には敵わないだろうに。
それでもどうして紫苑なのと思ってしまうわたしが、醜くて本当に嫌になる。