ハッピーエンドなんていらない



ああ、と言って微笑んで、

「最近見た小説の続編が、確かもうすぐ出るなと思って」

適当に思いついた言い訳を吐く。


でも、嘘ではない。

最近見て気に入った小説の続編が出ることは本当のことだ。

今それについて考えていたというのは、真っ赤な嘘だが。


「そっかぁ…。

もう、彩芽はいっつも小説のことばかりで全然構ってくれないんだから!」

「何言ってんの。結構構ってあげてるじゃん」

むぅと頬を膨らませてみせた紫苑にそう言い返し、頭に手をおいてくしゃくしゃとしてやる。

ふわふわとした紫苑の髪は、どんなにくしゃくしゃにしてもスッと指が通る。

毛先まで手入れの行き届いた髪。

こういうところも、負けてる。


「ほらほら、彩芽の代わりにおれが構ってやるから」

両手を広げる湊に、

「わたしは彩芽がいいの!」

そう言ってそっぽを向く紫苑。

< 15 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop