ハッピーエンドなんていらない
ああ、と言って微笑んで、
「最近見た小説の続編が、確かもうすぐ出るなと思って」
適当に思いついた言い訳を吐く。
でも、嘘ではない。
最近見て気に入った小説の続編が出ることは本当のことだ。
今それについて考えていたというのは、真っ赤な嘘だが。
「そっかぁ…。
もう、彩芽はいっつも小説のことばかりで全然構ってくれないんだから!」
「何言ってんの。結構構ってあげてるじゃん」
むぅと頬を膨らませてみせた紫苑にそう言い返し、頭に手をおいてくしゃくしゃとしてやる。
ふわふわとした紫苑の髪は、どんなにくしゃくしゃにしてもスッと指が通る。
毛先まで手入れの行き届いた髪。
こういうところも、負けてる。
「ほらほら、彩芽の代わりにおれが構ってやるから」
両手を広げる湊に、
「わたしは彩芽がいいの!」
そう言ってそっぽを向く紫苑。