ハッピーエンドなんていらない
雪はそんなわたしにふっと笑みをこぼして、「大丈夫」だと呟いた。
2人きりの空間の中、ふとある人影を見つけて笑みを浮かべた。
…やっぱり、来てくれた。
予想がぴたりと当たったことの嬉しさと、来てくれたことへの安堵でため息にも近い息をついた。
「湊、おはよう」
湊がわたしたちに気がつく前に声をかけることにした。
気付かれたら逃げられてしまうかもしれなかったから。
「おはよう、今日は早いな、お前ら」
ぼんやりとした目でわたしと雪を見て、湊は目を細めた。
無理をしているような笑みに、わたしは思わず怯んでしまった。
そのすきにさっさと登校しようとする湊に、わたしは慌てて話をした。
「昨日、なんで先に帰っちゃったの?」
その質問に、ぴたりと足を止めた湊は、振り返りざまとても悲しそうな顔をした。
そうして相変わらず笑みを貼り付けたまま、
「お前らが幸せそうなの、なんか見たくなくて」
悪いなと付け足してそんなことを言うと、いきなり走り出した。
止める暇も与えず、さっさとむこうに行ってしまう。
「ちょっと待ってよ、湊」
呼んでみたけれど反応はなく、彼の背がどんどん小さくなるばかりだった。