ハッピーエンドなんていらない
だけど雪はそっかと呟くだけだった。
ふと、本を置こうとした手を止める。
「…鍵、返しに行くから先に行ってて」
振り返って仕方なくそう口にすると、雪はなんでと首を傾げた。
「職員室に行くのに下駄箱の前を通るんだから、そこまでは一緒に行こう」
幼馴染なんだから、とでも言いたげだ。
本当は、少しだけ、ほんの少しだけ誰もいない場所で泣きたかったんだけど。
でもまあ仕方ないなと、喉元まで出かかった気持ちを飲み込んだ。
本を置く。
図書委員のおすすめだと立てかけてあった本。
その本越しに、体育館の前に立つ紫苑が目に入った。
そこに駆け寄ってくる、湊。
湊に笑いかける紫苑に、グッと胸が痛くなる。
一歩退いて目をそらして、急いで帰る準備を整えてしまって雪のところに向かう。
「どうかした?」
顔を覗き込んでくる雪に、フルフルと首を振る。