私、今から詐欺師になります
 ああ、今日から素敵な男の方になられましたけど、と言いながら、玲にキスされても、外国で、女性に挨拶でされたみたいで、嫌な感じがしないと言いかけ、やめてみた。

 なんだか言わない方がいい気がしたからだ。

 そのまま、黙り込んでしまったので、
「どうした?」
と問われる。

「いえ、なんでもないです」

 なんとなく会話が途切れた。

 ソファの上に置いていた手に、なにかが重なる。

 先程、温かいと感じた穂積の手だった。

 そのまま、キスしてこようとする穂積の肩に触れ、茅野は押し返す。

「だっ、駄目ですっ」
「なんでだ?」

「私に触らないでくださいっ」

「……どんな結婚詐欺師だ」
と言われ、

「いいえ。
 やはり、これは結婚詐欺ではありません。

 私は、穂積さんが……」
と思わず、言いかける。

 私は、穂積さんが好きなのかもしれません。

 だったら、これは浮気です、と言いたかったが、口に出すのも恥ずかしかった。
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