私、今から詐欺師になります
「また茂野に穢されたか?」

 茅野が答えないでいると、
「いい。
 俺が穢し直してやるから」
と茂野と同じことを言ってきたが、もう一度キスしてこようとする穂積を手で止め、茅野は言った。

「いいえ、無理です。
 貴方が私を穢すのは」

「なんでだ」

「だって、貴方に触られるたびに、穢れていたはずの私が綺麗になってく気がするから。

 ずっと、家のためとかお金のためとか言っても、好きでもない人とこんなことしちゃいけないと思って、苦痛だったんです。

 でも、貴方だとそれがないから。

 ……だけど、私なんて、貴方に愛される資格のない人間ですから」

 私みたいな人間は貴方とは行けません、と茅野はきっぱりと言った。

 穂積はひとつ溜息をつき、茅野を抱き締める。

「俺の側から離れてくくらいなら、詐欺のままでよかったのに」

「無理です。
 大好きです、穂積さん。

 私、産まれて初めて誰かを好きになったんです。

 だから、もう詐欺とか出来ません」
と言うと、

「最初から出来てないだろ」
と笑われる。
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