サガシモノ
キス
結局、職員室のも腕時計はなかった。


あたしは健と2人で夜の道を歩きながら肩を落としていた。


せっかく女教師までたどり着く事ができて、終わりが見えたと思ったのに、一気に暗闇の中に引き戻された感覚だった。


「大丈夫か?」


健があたしの手を握りしめてそう聞いて来た。


その手の暖かさにあたしは手を握り返した。


「うん……」


「無理すんなよ?」


「ありがとう。本当は結構ショックかも」


あたしはそう言い、苦笑いを浮かべた。


先生という存在に裏切られた気分だ。


「明日、また学校へ行ってみるか」


「新校舎の方?」


「あぁ。吉原先生についてなにかわかる事があるかもしれない」


「そうだね……」


それこそ、あのアルバムには先生の住所だって載っていることだろう。


それを頼りにまた動けばいい。
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