サガシモノ
壊せなかった旧校舎
校長先生の部屋に入ったのはこれが初めてのことだった。


もっと名誉なことで呼ばれたならよかったのに……。


豪華な茶色にソファに座っても、座り心地は最悪の気分だった。


あたしたち5人が座り、その前のソファに校長先生が座る。


大理石のテーブルを挟んで向かい合っていた。


校長先生は律儀にもあたしたちに麦茶を出してくれたけれど、緊張で喉を通らない。


「君たちは自分の意思で旧校舎へ行っているのか? それとも、別に理由があるのか?」


その質問にあたしは健を見た。


健も好調の質問に違和感があったらしく、チラリと目配せをしてくる。


生徒を叱る時にソファに座らせるというものおかしな話だ。


「もちろん、理由があるからです。校長先生はなにか知っているんですね?」


陽が真っ直ぐ背筋を伸ばしてそう聞いた。


校長は顎髭をさすり「まずはすべてを教えてくれないか」そう言ったのだった。
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