私に恋してくれますか?
「雛子、ルピナスに戻るようになったんだろうから、
仕事として、外国人旅行者の観光の相談っていうのを、
週に2回くらいしてくれないかしら。
駅前の観光案内所に英語ができる人がいないかって聞かれているの。
お父様には許可を取ってあるわ。」と微笑む。

…良いけれど…
私が頷くと、
母は嬉しそうに笑い、

静子さんを呼んで、トレイを運ばせた。
トレイの上にはビロードの小さな箱が3個乗っている。

「日野家の者の印。
まあ、自分にしかわからないけれど。
ルピナスの花がデザインされているの。」と私に箱を開けてみせる。

金色のピンキーリング
花の模様に小さなエメラルドが3つ付いている。
母がつけているものと同じものだ。

「如月と楓さんにも。」と箱を渡す。

楓さんも同じもの。
兄にはプラチナのカフスボタンとタイピンだ。
お父さんがパーティーや改まった式に付けていくものと同じものだ。

「皐月は恥ずかしいシロモノ。と言って、
地域の活動の時だけ、付ければ良いんでしょって笑ってたわ。
付けなくても構わないけど、
一応、自覚を促すために。」とニッコリした。

「ありがとうございます。」
楓さんと私は指につける。

楓さんにとっては日野家の者になった印。
私にとっては大人になった印だ。
たとえ、自分にしかわからなくても…。




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