私に恋してくれますか?
帰りの車の中。
私が少し咳をすると、

「さっきから、その咳が気になるんだけど…。
今日は顔色も悪いし。」

「少し、夏風邪を引いただけです。
大したことはありません。」と笑ったけれど、さっきから、ゾクゾクと背中が寒い。
冷房が効きすぎた部屋で食事をしたせいかって思っていたんだけど…。
目を閉じるとウトウトとしてしまった。

「雛子ちゃん、着いたよ。」と声をかけられ、慌てて目を開けると、
足立先生が顔を覗き込んで、ひたいに手を当てた。

「やっぱり、熱出てるね。」とため息をつき、
部屋まで送る。と言って私を立たせて肩を抱いた。

「ひ、ひとりで帰れます。」と言ったけど、ふらついて真っ直ぐ歩けない。


「部屋に入ったら、静子さんを呼ぶよ。
病人を襲う趣味はないから安心しな。
俺も明日仕事だし、静子さんが来たら帰るよ。」と私の身体を支えて歩き出した。

「すみません」と小声で言って大人しく歩く。

トオルくん以外の男の人は部屋に入れないって言ったのに…。
私は心の中でそう呟いていた。




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