私に恋してくれますか?
第2章 輸入雑貨店。

トオル君の家。

2階の3つあるうちの1番奥の部屋に案内される。
1番手前がトオル君の部屋。
真ん中は物置らしい。

シングルベットと作り付けのクローゼット。
フローリングの床に小さな子供が使うようなテーブルだけがある素っ気ない部屋。
カーテンは薄いピンクの花柄で、少しくすんでいる。
昔(?)は彼女が使っていたらしい。

窓に近寄ると、目の前は桜の木。
きっと、春に花が咲いたら綺麗かな。
芝生の貼ってある和風の庭。所々茶色に色あせていて、
紫陽花や、紅葉、金木犀、ユキヤナギが葉を落として寒そうに立っている。


2階の廊下に置かれた家用の電話を借り、
(事務所の電話は別。もちろん非通知にして、電話番号がわからないようにしておく。)
とりあえず暗記していたお姉ちゃんのスマホに電話すると、すぐに繋がった。
「ヒナコ、どこにいるの?」と笑った声。
「まさか、家から脱走するとはおもわなかったわ。
それも、カメラにオトコの姿が映ってたらしいじゃない。」と面白そうに言った。

もう、仕事先のお姉ちゃんまで、知っている。
家じゃ、大騒ぎだ。とちょっと考える。

「えーと、お友達のところに居させてもらってる。
しばらく帰らないつもり。
でも、荷物を何にも持ってないの。
お姉ちゃん、助けてくれる?」と聞くと、

「いいわよ。静子さんに頼んどく
お父さんに知られなきゃ、いいんでしょ。」と笑い、

「用意しておく。明日また電話して。
そこはヒナコのオトコの家?」と聞かれたので

「友達の家です。…普通の生活をしてみたい。」と小さな声で言うと、

「社会見学ってことね。」とお姉ちゃんはくすんと笑って電話を切った。
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