私に恋してくれますか?
部屋に戻って少し悲しくなる。

お母さん、大丈夫かな…
勝手に家出しちゃって心配してるだろうな…ベッドに座ると、涙が溢れてきた。

ノックの音。
「ピーコ、仕事手伝える?」とトオル君はそっとドアを開ける。
私が涙をゴシゴシ拭くと
「泣き虫は直ってないんだな。昔、カマキリくっ付けると泣いてた。」
と笑いながら私の頭をポンポンと叩いた。
私は膝のうえで拳を握って、泣き声を我慢する。
「帰って、お見合いするか?」とトオル君が言うので、
「トオル君の馬鹿。」と言うと、
「昔も言われた。」とクスクス笑った。

「泣き止んだら、下に降りて来いよ。コーヒー淹れて。」と言って部屋を出て行った。

私はここに置いてもらってるんだ。
お客さんって訳じゃない。

私は顔を洗うためにタオルを持って立ち上がった。

顔を洗って、髪を後ろでひとつに結ぶ。
お化粧品はないから、
お化粧はできないけど、
少しだけ、背筋が伸びた気がする。

普通の生活をしたい。

自分で生きていけるようになりたい。

頑張っていれば、お母さんもきっといつかわかってくれる。

そう思って、鏡に向かって笑いかけてみた。
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