もう二度と昇らない太陽を探す向日葵
8.太陽と向日葵


 ────2016年8月29日。

 長いようであっという間の夏休みが終わり、また学校が始まる。

 今日、学校では始業式が行われ、私は転校生の〝陽本蒼〟と出会う日。


 いつもなら8時を過ぎた頃に慌てて起床する私が、今日は6時過ぎには目が覚めた。目覚ましもいつも通りセットしていたけれど、その目覚ましよりも先に目が覚めるという奇跡のような出来事が起きた。

 私は、素早く制服に着替え、身支度を整えた。カバンを手に取り部屋を出ると、仕事からちょうど帰ってきたらしいお母さんが目を見開いて驚いた。

「あら、夏帆ってば、こんな時間にどうしたの?」

「どうしたのって、学校に行くの!」

「でも、随分と早いじゃない。今日は真夏なのに雪でも降るのかしら?」

「そんなわけないでしょ!私だってたまには早起きくらいするの!あ、お母さん、私急いでるからもう行くね」

 朝ごはんとして母が置いていた菓子パンとお昼ご飯のお弁当をカバンに放り込むと、私は急いで玄関へ向かった。

「気をつけるのよ。いってらっしゃい」

「はーい!行ってきます」

 玄関で、リビングの扉からひょっこりと顔を出しているお母さんにぶんぶん右手を振った。そして、私は慌てて外に出ると走り出した。

 走って、走って、段々と多くなる人を避けながら駅付近でお兄さんを探した。

 すぐにお兄さんを見つけ出した私は、またスピードを上げると、お兄さんのもとへと走って寄って行った。


「お兄さん!」

 私がそう呼ぶと、お兄さんが振り返った。振り返り、優しい表情で笑ったいつものお兄さんは、私に「おはよう」と返した。

< 113 / 125 >

この作品をシェア

pagetop