もう二度と昇らない太陽を探す向日葵

「お兄さん、おはよう」

「今日は随分と早起きだね」

「ふふ、偉いでしょ?」

 ドヤ顔を披露して笑う私。お兄さんは、そんな私のことを「偉い偉い」と言って頭を撫でてくれた。

 ああ、私、幸せだ。と身に染みて感じる。

 幸せと、また今にも溢れてきそうな涙を同時に噛み締める。涙をぐっと堪え、幸せだと感じられるこの瞬間をしっかりと胸に刻む。

「夏帆」

「なに?」

「少しだけ、目、閉じて」

「え、うん」

 ゆっくり、瞼を下ろす。すると、私の右耳付近の髪にお兄さんの指先が通った。

 ゆっくり、丁寧に私の髪の間を通る指先。その指先が、私の髪を優しく右耳にかけると、右耳の裏側に何か鉄のようなものが当たり、ひんやり冷たいような感覚がした。

「いいよ」

 そう言ったお兄さんの言葉を合図に、私は下ろしていた瞼を開けた。

 お兄さんが触れていた右側の髪に触れてみると、そこにはピン留めのようなものがつけられている。

「ここで見てみて」

 お兄さんは、すぐそばにあったお店のガラスを指差した。そのお店の商品がディスプレイされているガラスで、私は、言われた通りそこで髪につけられたものを確認した。

「可愛い……」

 ショートボブの私。その短い髪につけられているのは、向日葵のピン留め。そのまま向日葵の花が付いているみたいでとても可愛い。

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