涙雲
燦々と太陽が輝く。
ぼとりと、アイスがアスファルトの上に落ちた。

「あ」



地面に触れたアイスは、すぐに溶けて広がっていく。


「あー……」


さっきまでアイスと一緒にあった棒とアイスを見比べて、ため息をついた。



最後の一口。


食べたかったのに。


「最後の一口がおいしいのに、残念だったね」



後ろからあたしの手元を覗きながら駄菓子屋のおばちゃんが言った。


全然残念なんて思ってないじゃん。


くそっ、と悪態をついて手から棒を離す。


「こら、ゴミはゴミ箱に捨てなさい」


後ろでおばちゃんの声を聞きながら
財布とお弁当しか入ってないスカスカの鞄を引っつかんで、あたしは立ち上がった。


「こら!!ひばり!!」
怒鳴り声を無視してあたしは空を見上げ、目を細める。
日差しで、焦げそうなくらい暑い。


暑いというか、むしろ痛い。



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