強引専務の甘い手ほどき

忙しい冬。

洋菓子店は12月は忙しい。

私は本店を手伝えるように水城さんにお願いし、
久しぶりに販売の仕事に戻った。

少しキサラギさんから離れてみたいって思ったのだ。
キサラギさんは少し、機嫌の悪い顔で
「あんまり寄り道して遅くなるなよ。」と言って許可を出した。

キサラギさんも、翌年2月にオープンする支店と、駅ナカ店の事で更に忙しく、
朝出かけて、夜中に帰るようになった。

ただ、
12月はパーティが多く、そんな時はキサラギさんは私を伴って出席する。
石神さんは美鈴ちゃんを伴う。
秘書2人はスーツ姿で、周囲に気を配り、キサラギさんが困らないようにしているけど、
アシスタントの私は、ただの飾りだ。
キサラギさんが用意してくれたシックなワンピースや、ドレスにに着替え、パーティに出席する。
私はキサラギさんのそばにたち、笑顔でいるだけだ、
(ちっとも役に立っていない)
仕事の話になると、
石神さんとキサラギさんが対応し、
私は美鈴ちゃんとソファーに座って、大人しくしている。
美鈴ちゃんは私に付き添って、私が周りに話しかけれたときに
困らないようにサポートしてくれる。

そして、その後は
キサラギさんと一緒に部屋に戻り、身体を重ねる。
(まあ、遅い時間に仕事から戻っても、抱き合う事もあるけど。)
忙しすぎるキサラギさんはあまり話さず、私を抱きしめ深く眠る。
私はキサラギさんの無防備な寝顔を長い間眺めた。

上手く眠れない。

ベットに横になると、
キサラギさんと別れなければいけない。と考えてしまう。
前にはいつか。と思っていたけど、
今は、今日、明日にでも、

他のヒトと結婚することになった。別れよう。

と言われる気がしているのだ。


いっそのこと、自分から別れてしまったほうがいいのだろうか。

そう思いながらキサラギさんの胸に顔を埋めた。
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