乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
「んー!!!!美味しい!」

 感激の声を出し、パクパク食べる杏樹を見て、雅輝は、目を細め、微笑む。

「朝からこんな美味しいの食べれるなんて!!最高!!」

 言ってしまって杏樹は、"はっ"としてしまう。完全に地が出てしまっている。

「いい、食べっぷりだな。作った甲斐があるよ!」

「えー!!あなたが作ったの?」

「んっ。自家製の味噌漬けも食べるか?」

「うんうん!食べる!」

 美味しいご飯に、もう逢うこともないだろうと言う気持ちからか、杏樹は、周りから見られるイメージに囚われることなく、素直な反応をしてしまう。

「お前、旅行中?」

「えっ!?」

 ふいに、雅輝に聞かれ、雅輝の指差す方を見るとスーツケースがあることに気がつく。

 嘘をつけず、あったばかりの人間なのに、洗いざらい話してしまった。

 話が終わると、何故か雅輝は大爆笑。

「あはははっ!!」

「えっ!?今の話に笑う要素があった?」

「嫌、お前が最高に面白くて!」

 今だに笑いこけている雅輝を見て、杏樹も、何故だか笑ってしまった。

「みんな、私が、何も言わず、ただ微笑んでいるマリア様とか、天使とか思ってるんで、会社では黙ってたんですけど、ばれちゃいました。そしてあなたにも。」

「見た目どっかのお姫様みたいだもんな?」

「よく、口を開かずただ座っておけと言われますが…。」

 杏樹はムッとした顔で雅輝を見るが、気にする様子もない。

「で、どうすんの?これから?」

「とにかく、住むとこ探して…。それまでは、マンスリーマンションかな。」

「探してる間は、ここ居ろよ?三食飯付き。嬉しいだろ?」

 目の前の男はニコっと笑い、杏樹に話を持ちかける。
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