乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
「ねぇ~。雅輝さん~。新居はどうします?私、お風呂もベットも広いのがいいわ。」
「あやめさんに任せますよ。」
あやめは四六時中、ウェディング企画室に出入りし、こんな会話を杏樹に聞かせるためわざと大きな声で話をする。
プレオープンの日も近くなってきており、只でさえピリピリした空気なの、さらに拍車をかけ周りを苛立たせる。
お昼休憩に差し掛かり、あやめが雅輝と連れだって出ていくとき、あやめが杏樹に話しかける。
「立花さん、婚約パーティーの時、誓いの言葉の承諾人、あなたにお願いしたいんだけど、頼めるかしら。」
「…承諾人ですか。」
「そう、誰よりもあなたが適任と思って。そしてあなたに見届けながら誓いのキスをするのが夢なのよ。……お願いして構わないわよね?」
「そんな大役、私には勤まりません、あやめさん。」
「やってちょうだいよ。それと、私、雅輝さんの奥さまになるんだから、奥さまって呼ぶように、いいわね?」
ウェディング企画室の、みんなを見渡しながらあやめは偉そうに話す。
「……奥さま、いってらっしゃいませ。」
雅輝の腕に、腕を絡ませながら微笑む姿にズキッとしながらも、それを隠して二人を見送る。
その姿をゆずると直哉は、やるせない表情でみて、何て声をかけていいか悩む。
それはなずなも同じだが、あれ以来二人の中には溝が出来、それも埋まらないままだった。
あやめが杏樹にする仕打ちは、初めのうちは雅輝の目には触れないような事ばかりであったが、最近では目に余るものがある。でも、雅輝は何も言わないのだ。
婚約報道が流れた時、杏樹をよく思っていない従業員は、あやめに対して友好的であったが、あやめの横暴ぶりに、副社長の妻としての資質を問う声も、最近では聞こえてきた。
会社全体が、結城財閥や専務に不信を持ち、副社長と一緒に会社を盛り上げたいと思っていた従業員も段々とやる気をなくし、とてもよい状態と言えないまま、日々は過ぎ去る。
そんなある日、杏樹は、体に違和感を感じる。ダルい、気持ち悪い、急に涙脆くなったり、心乱され、雅輝があやめといることに、かなりショックを受けているのだと思い込んでいた。
絵梨と渉と、ご飯に行く約束をしていた杏樹は、体調が悪いことを気にせず約束場所に向かう。
絵梨と渉が杏樹を見つけた時、杏樹は、二人の目の前で倒れたのだ。
杏樹の名を呼びながら、二人が近寄って来るのをスローモーション見たいに眺め、そこで意識が切れた。