乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
それから1ヶ月たった時、何も知らない連条社長が、眠りから覚めた、結城財閥との婚約は社長の耳にはいれないよう箝口令が引かれたのだ。
病室にはテレビや雑誌、新聞、ネットなどの情報を一切シャットアウトし、看護婦や医師、見舞い客も触れない徹底ぶりだ。
これは、知られたくない雅輝と婚約まで漕ぎ着けたいあやめの二人の思惑からだった。だから、公の場で二人が一緒でも、二人で病室を訪れることはなかった。
「連条。調子はどうだ?」
「ああ。いつも悪いな、七瀬。」
「今までががむしゃらだったんだよ。ゆっくり休めよ。」
「……会社はどうだ?雅輝はちっとも仕事の話しはしないし、彼女も中々会いにきてくれないから。」
彼女とは杏樹のことだろうと思いながらも、軽く受け流す。
「今は、ウェディング企画が佳境だからな。忙しいんだよ。」
「それもそうだな。しかし、白愁先生にお世話になるとはな。」
悠一の父は、あの日を思いだし小さく笑った。
あの日、会社の誰もが先に流れたらメディアの情報に驚いた。悠一から、電話を貰い、悠一の父がオフィスーRーラポールについたときには、会社は報道人に囲まれ、従業員も電話対応に追われ、仕事にならなかった。
期日の3日目にどのような判断をしたかは、悠一も誰もが知らされていなかったため、対応が出来ず、メディアの情報でしか情報を得られなかった。
そんな中、杏樹は出勤し普通に仕事を始めれ、雅輝とあやめが一緒に出勤し、会見を開いたのだ。
「私、連条雅輝は、結城あやめさんと婚約することになりました。プレオープンの日に、婚約パーティーを会場内で行いたいと思います。」
雅輝の言葉ではっきりと伝えられたが、会社の人間は心から喜ぶことは出来なかった。
悠一が問いただしても、必要以上のことは言わず、殴りあいの喧嘩まで発展し、周りもこの件に触れたくても触れないようにしているのが分かる。
しかし、黙っていなかったのが、杏樹をマブダチとまで言った白愁先生だった。
委託された仕事をやらないと訴えてきたからだ。
「君が私に言ったことは嘘だったのか!それに、あんたら二人の婚約パーティーを、わしの帯のお披露目なぞ言語道断。他の人物を探すんじゃな!!」
みんなで頭を下げてもその意志は固そうであったが、杏樹の口添えで、事なきを終えた。
そんな辛い思いをしても、淡々と仕事をこなす杏樹を、悠一の父は不憫に思っていた。
「ウェディングのプレオープンの日は楽しみだな。」
楽しそうに笑う社長に、悠一の父は何も答えなかった。