俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「…………器用ですね」
見上げる姿勢が辛くなって、首をコキコキ回しながら目的の資料の棚へと歩き出す。
何がそんなに不満なのか。
またもや豹変した彼の態度に首を傾げる。
「その資料、月曜の高宮さんのアポで使うやつだろ?」
「…………物知りですね」
「昼過ぎ、忘れてたって騒いでたぞあの女の人」
その時になんとかしたら終わってたんじゃないのか?なんて、今更ながらに思ってしまう。
「…………桃山さんです。覚えてくださいね。小早川君の先輩です」
「あんたもよくやるね」
「…………小早川君のそれは何処かに切り替えスイッチでもありそうですね」
「………………くだらね」
すみませんね。
でも、よく見てますね。
「さて、仕事です。この辺りの過去の図面は狭小住宅のエリアなので、自分のお客様に当てはまったときに見返してみて下さい。狭小住宅のプランはうちの会社はそこまで多く取り扱っていないので、行き詰まったときの参考程度にはなると思います」
「…………わかった」
「後、後ろの棚とかもプラン、年代別に仕分けてあるので、何処に何があるのか今見学してきて下さい。私は今から図面を探します」