俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
彼に会えただけで、なんとかなるんじゃないかと根拠のない自信がついたのは土曜日。
だけど、現状は全くそんな事にはならなかったのが日曜日。
やっと幼馴染みの彼女と話は出来たものの『もう少しだけでいいから婚約者のふりをしてほしい』と頼み込まれ、キヨさんからも私に頭を下げるからと日曜日の夕方会ってほしいと恭一君から連絡が入った。
「もしもし、杏?悪い、ちょっと出てこれるか?」
夕方17時頃そう言った恭一君と会社近くのカフェで待ち合わせをした。
最初は私のいるアパートの近くまで来ると言ってくれたが、ここにキヨさんを近づけたくなかった。
私の全くあてにならない女の第六感がキヨさんに対して危険信号を出していた。
ただの嫉妬だけど。
カフェの窓際に座って何気なく外を見る。
すると恭一君の乗る黄色のビートルが通りすぎた。可愛い女の人を助手席に乗せて。
近くに車を止めたみたいで、二人ならんで仲良く歩いてきた。
その姿はお似合いのカップルにしか見えなくて、私が隣に並んでもあんな風には見られないだろうなって考えて胸の奥がチクリと痛んだ。
「杏。ごめん待たせたか?」
私を見つけて、当たり前のように隣に座り、嬉しそうにしてくれた。
うん、大丈夫。
落ち着かなきゃ。
そう思って見据えた先にいた人は、
「初めまして、こんにちは」
と、栗色の肩下まである長い髪を耳にかけ、お人形のような青い瞳に、スッと通った鼻、赤くぽってりとした唇を動かせてでまっすぐと私を見て、小鳥のような可愛い声で話しかけてきた。
うわわわわわぁぁぁぁ。
なんて可愛い人なんだ!
「はっ、はじめまして。笠原と申します」
頭をぺこりと下げて、あわあわと隣に座る恭一君の肩を叩き、「何ですか、この可愛い人は!」とおばさんように叫んでしまった。
うわぁーうわぁー。
すごーい。
なんて可愛い人なんだろう。
思わずニコニコしてしまう。