俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
そう言って、キヨさんは駅に向かって歩きだした。


乗れるじゃん、電車。


心のなかで突っ込んで。
不意打ちの、最後に落とされた告白の威力が凄まじく、私は暫くその場から動けなかった。

キヨさんと会ったのは、時間にするとほんの一時間ほど。
対峙していた話より、ダメージとしてはこちらのほうが何倍もキツかった。

だって、私はそれに幸せを感じていたんだもの。

恭一君とのキスが好き。
軽く触れあうようなキスも、激しく混じり会うような深いキスも。
彼と共に起きる朝に、絡みつく腕も。
私を腕の中に閉じ込めてこれでもかっていうほどすり寄ってきてくれるんだもの。


そこに感じた幸せは……私だけのものじゃなかったんだ。


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