青春のグラジオラス
 「ヨシさん、客いないからってくつろぎすぎ」

 「あー、気にすんな気にすんな。ほらあれだよ。鬼の居ぬ間になんとやらってやつだ」

 「ヨシさんにとってお客さんは鬼なのか…」

 相変わらずの適当さに思わず嘆息してしまう。別に今に始まったことではないけれど、もう少し店長としての威厳というか、そういうものを持ってほしい。店長としての威厳がどういうものかは分からないけれど、せめて客がいつ来てもいいようにしていてはくれないだろうか。

 「そんなことよりほら、これ買いに来たんだろ?初がいつ来てもいいように確保しといたんだ。感謝しろよ?」

 「そう言いつつ実はヨシさんも読みたかったんでしょ」

 「ありゃ、バレちったか」

 舌先をチラリと出して見せる仕草は微塵たりとも可愛くなかった。

 「実はもう読んじまったんだよ。そのせいで昨日は徹夜さ。おかげで今眠いのなんのって」

 大きなあくびをしながらヨシさんは言う。確かによく見ると目の下にはくっきりとくまが残っていて、徹夜の根拠をはっきり示していた。
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