うっせえよ!
花の名社名物、喧嘩。





「ふざけんな!」



怒鳴り散らされた声は、応接ロビー内をまるでスーパーボールのように跳ね、そのすべてが私の耳に吸い込まれるように入ってくる。



思わず耳を塞ぐと、無意識に目も閉じている。人間の身体って不思議。



「だーれが、こんな原稿寄こせって言ったよ? 俺はこんな原稿書いてこいって言ったつもりはないぞ。」



誠司さんはまだ怒り足りないのか、丸テーブルを両手でバンッと叩いた。その拍子に、紙コップに入ったコーヒーが傾き、床にこぼれた。



「だから、今度の短編はこれで行きたいんです!」



「ダメだ。」誠司さんは吐き捨てるように言った。



「お前には恋愛小説は向いてない。」




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