うっせえよ!





京都円山公園にあるという懐石料理店は……何というわびさびを感じさせるものだろうか……。



息をのむ。言葉が出ない。和を感じさせるものがあって、建物が自然に溶け込んでいる。



粋な門構え、改装したばかりと言われてもおかしくないほどの綺麗な空間。



思わず背筋がピンと伸びて、学生時代、一社だけ受けてみた企業面接のような緊張を思い出した。



「すごいですね……。」



思わず小声で話してしまう。



「だろ? こんなところでゲップなんてしてみろ? 時代が時代なら切腹ものだぞ?」



「誠司さんじゃあるまいし、そんな下品なことはしません。」



「俺だってそんなことしねえよ。屁はよくこくけど。」



なんて場違いな話を待合室で話していると、小奇麗な格好をした年配の夫婦と、私と同い年くらいの女性が入店してきた。



「おやじ、おふくろ。こっちだ。」



そう誠司さんが手招きをし、私は思わず席を立って軽く会釈をした。



「はじめまして、お義父さん、お義母さん。私……。」



と挨拶をしようとした矢先、私くらいの歳の女性が走ってきて、誠司さんに抱き着いた。



「お兄ちゃーん! 久しぶり! 会いたかった!」




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